研究生活誌 @ドイツ博士課程

ドイツ博士課程生活について話します

親知らずの抜歯

7月末にドイツへ飛ぶ予定ですが、「留学前には歯医者に行け!」ということで歯医者に行ってきました。現在は2本目の抜歯が終わって二日後です。

リテイナーをつくる(親知らずの発見前)

最初はリテイナーを作るために行きました。合計4500円くらいで上下のリテイナーを作っていただきました。今どきのリテイナーってワイヤーじゃないんですね。歯の上に薄いプラスチックをカパッとはめる感じです。下の写真の右が上です。上は噛み合わせのために少し白い(黄色い?)のが足してあります。歯を食いしばったときに左右均等に力がかかるようにしてくださいました。つまり、ナイトガードとしても使えます。通常のリテイナーは保険適用外だそうですが、ナイトガード一点までは保険が効くということで安くしていただきました。下は保険が効かず、5000円だったのですが、知人からの紹介で訪れたので5000円びきにしてもらって消費税の500円のみですみました!

リテイナー
親知らずの発見および抜歯の予約

で、そのときにレントゲンを撮ったわけなんですけれども。下の親知らずが二本横向きに生えているではありませんか!まだ顔を出してはいないし、痛くもないけれど、「もしこのまま生えてきたら下の歯が両側から中心に向かって押されて歯並びが悪くなるかもしれません」って。歯が重なっちゃうわけですね。それにドイツで歯が痛くなって抜くことになるのも不安です。保険がきくということなので抜いてしまうことに。1本目を抜いて、2週間後に反対側を抜きます。2本目を抜いた次の週に抜糸・消毒をして終了です。7月の末にドイツに行くので(タイムリミットがあるので)先に最後の抜糸・消毒までの予約を取ってしまいました。

いざ抜歯

抜歯は1時間程度で終わりました。

はじめに表面麻酔を行います。続いて浸潤麻酔。診療明細書を見るとキシレステシンAです。キシレステシンAには伝統的なナトリウムチャネル遮断薬(ナトリウムの細胞内への流入が抑えられ、脱分極が起こらないため神経伝達が遮断されます)のリドカインに加えてアドレナリンが入っています。アドレナリンは交感神経を興奮させる薬ですね。皮膚の血管にはアドレナリンα1とα2受容体が多く存在するため血管が収縮します。リドカインは血管からすぐに吸収されやすいため、拡散して局所にききにくくなるうえ、薬が余計に全身をめぐってしまう、ということでそれを防ぐためにアドレナリンが含まれているようです。注射は全然痛くなかったです。1.8mLを3本打ちました。矯正のために以前にも抜歯したことがあったのですが、そのときの麻酔の注射が痛かった記憶があります。針が細くなったんでしょうか。技術の進歩ですね。キシレステシンは結構苦いので注射後には一度うがいをします。先生はその様子を見て副作用が出ていないか確認しているのでしょうね。

もう一度横になって、抜歯します(されます)。麻酔が効いて痛みは全然ありませんでした。ここからは想像です。タオルで目隠しされるので見えません。まず、(たぶん)歯茎をめくって親知らずを露出させます。親知らずが横向きに生えているので、引き抜くことができません。隣の臼歯がじゃまです。そこで、電動ノコギリ的な音がするもので歯を割ります。そして破片を取り除きます。割って破片を取り除くので力がかかることもあまりありません。以前に永久歯を抜いたときには思いっきり引っ張られたので、そのときとは大違いでした。あっけなく終わりました。最後に傷口を縫って塞ぎます。

終わった後は口を軽くゆすぎます。勢いよくゆすぐと間違いなく水を吹き出します(噴き出しました、床濡らしました、、先生ごめんなさい)。というのも麻酔で口がうまく閉じないからです。ゆっくりゆずぎましょう。ゆすいだらお薬を飲みます。抗生物質と痛み止めです。どれどれ、抗生物質はセフジニル、痛み止めはジクロフェナクですね。セフジニルはβ-ラクタム環をもつので作用機序はペニシリンとほとんど同じで、細菌の細胞壁ペプチドグリカンの合成を阻害します。セフェム系(β-ラクタム環の隣にヘテロ6員環をもち、副作用が比較的少ない)の第三世代です。ジクロフェナクは、NSAIDs(non-steroidal anti-inflammatory drugs)の一つですので、COX(シクロオキシゲナーゼ)を阻害します。COXの阻害によりプロスタグランジンの合成が阻害されます。プロスタグランジンはブラジキニンなどによる疼痛の閾値を低下させて痛みを感じやすくさせるはたらきがあります。したがって、NSAIDsを飲むと痛みが和らぐわけです。

抜歯後の経過

抗生物質は3食後3日分、痛み止めは10錠(頓服)出ました。抜歯の当日は出血が止まりませんでした。口の中はずっと血の味がしました。翌日には血が止まりましたが、朝起きたときにまま痛かったので痛み止めを飲みました。痛くて口が大きく開きませんので食べ物は小さく切ります。結構腫れました。顔が食パンマン(片側)になりました。数日は腫れが続きました。1週間もすると目に見える腫れはひきましたが、しこりみたいな小さな硬い腫れがさらに数日間残りました。2週間すると痛みもほんとどなくなりました。ただ、傷口に食べかすが入って気になります。先生曰く、傷口が埋まっていくときにゴミは排泄されるので気にしなくてよいと。でも気になる。

2本目の抜歯

1本目の傷が治ってきたこのタイミングで2本目を抜きます。抜き方は1本目と同じでした。今回の手術序盤、鼻にタオルがかかっていて息苦しかったためにもがいていたら、「大丈夫ですか?!痛いですか?」と聞かれたので、「は、鼻を!」と訴え改善してもらいました(最初から自分で言いなさい)。その後、2本目も順調に抜けました。

抜歯にかかったお金

お薬代を含めてかかったのは1本あたり3920円です。アメリカでは数万かかるらしいという話を聞いたのでそれに比べると安いですね。ドイツでは、歯科も含めて医療費の窓口負担が0なので、コスト的にはドイツのほうがよかったかもしれませんが、抜歯まで待たされたり、先生の評判を調べるのも難しそうだったりということもあるなので抜いてよかったです。親知らずは痛んでほしくないときほど痛み出すって言いますからね。先手必勝。

 

PS

*今回のお薬は薬剤師を通して出してもらっていません。院内処方は患者からすると楽で安いからいいのですが、若干不安になりますよね。私などは普段は薬を飲んでいないので大丈夫ですが、普段薬を飲んでいる人はちゃんと先生に相談したほうがいいですね。相互作用なんかがありますから。

 

**ちなみに今回お世話になったのは「神田ふくしま歯科」さんです。副院長の女性の先生に診ていただきました。いつもニコニコしていて素敵な方です。おすすめです。